耐震補強工事の種類にはどんなものがある? 工法や事例を紹介!

阪神淡路大震災と東日本大震災、20年間に2度起きた大震災の経験から地震に強い家の需要が高まっています。従来の耐震工事に比べて最近は免震工事という新しい工法も出てきました。しかし、日本にはまだ地震に弱い古い建物も多いのです。

そこで今回は、耐震補強工事についてご紹介しましょう。耐震リフォーム事例をあげながら、耐震補強とはどのような工事のことを指すのかということや、耐震補強工事の工法などを説明していきます。

自宅の耐震補強工事を考えているという方はぜひ読んでみてくださいね。

  1. 耐震補強工事とは?
  2. 耐震補強工事の事例は?
  3. 制震ダンバーをつける制震工事も視野に入れる

1.耐震補強工事とは?

耐震補強工事とは、文字通り自宅の耐震強度をあげる工事のことを指します。ではなぜ耐震補強工事が必要なのでしょうか。この項では耐震補強工事の必要性をご紹介しましょう。

1-1.古い住宅は地震に弱い

日本の建築基準法では1981年と2001年の改正で耐震基準が見直されています。2001年以降に建てられた建物は基本的に耐震強度が高く、震度6以上の地震が来ても一度は耐えられるでしょう。しかし、逆に言えば1981年以前に建てられた住宅は震度6以下の地震で大きな損傷を受ける可能性があります。1981年に作られた古い住宅は、一刻も早く耐震補強工事をするべきでしょう。

1-2.築年数が経てば耐震強度も下がる

1981年以降に建てられた住宅も、築年数とともに耐震強度が下がっていきます。その最大の原因が土台や柱の腐食や基礎の劣化、そして柱と土台の接合部の強度低下です。日本は高温多湿の上、木造住宅が主流。ですからどうしても築年数とともに木製の建築材が腐食しやすいのです。

また基礎はコンクリートという家も多いのですが、コンクリートも年月とともに劣化します。「自宅は1981年以降に建てられた住宅だから、一応は安全だ」とも言えないのです。

1-3.瓦屋根の伝統的な日本住宅は倒壊しやすい?

日本の伝統的な建築方法では、柱や梁(はり)で屋根を支える構造になっています。これならば壁が少なくても大丈夫ですから、内壁の少ない風通しの良い家が建てられるのです。しかしこの構造では、柱が土台から外れれば家が倒壊する確率がぐっと高くなるでしょう。

また瓦屋根は、トタンやスレート材の屋根よりずっと重いのです。重いものが乗った細い柱を揺さぶれば、倒壊の危険性はさらに高まるでしょう。ですから日本の伝統的な建築方法で作られた家も、耐震補強工事の必要性があります。

古い住宅ほど耐震補強工事が必要なんですね。
はい。そうすれば、耐震強度を上げることができます。

2.耐震補強工事の事例は?

では、耐震補強工事の事例にはどのようなものがあるのでしょうか? この項ではその一例をご紹介します。

2-1.壁を増やす

建物に対して窓が大きく、壁の割合が小さいと耐震強度は低くなります。また壁に強度があっても窓とのバランスが悪ければ、耐震強度は下がってしまうでしょう。そこで窓をつぶして壁の割合を増やしたり、壁のバランスをよくすることで耐震強度を上げるのです。

2-2.接合部の緊結を補強したり筋交いを作ったりする

土台と柱や、柱と梁の緊結を補強することにより、耐震強度をアップさせることができます。壁を壊す大掛かりなリフォームになりますが、壁を増やす工事と同時に行うとさらに耐震強度をあげることもできるのです。

また、柱の数が少なく緊結を補強しても耐震強度が心配という場合は、柱と柱の間に筋交いを通すことによって耐震強度をあげる工事もできるでしょう。

2-3.腐っている柱や土台を取り換えたり補強したりする

柱や土台が腐食していたり、傷んでいたりすると耐震強度は格段に下がります。そこで柱を取り換えたり、土台を補強することにより耐震強度を上げるのです。このリフォーム方法は、土台をむき出しにしなければならないので、感覚的には立て直しに近いかもしれません。

しかし法律上は土台が残っていれば新築ではなく、リフォームになるのです。ですから法律の関係で一度家を壊してしまうと二度と同じ土地に同じ広さの家は建てられない、という場合に行う方法でもあります。

2-4.リフォーム控除を受けよう

さてこうしてあげてみると、耐震補強工事はどれも大掛かりであることがわかります。工賃も決して安くはありません。しかし耐震補強工事の方が、耐震構造や免震構造で家を建て直すよりは、安価でしょう。

現在はリフォームローンもありますので、何が何でも一括で工賃を支払わなければいけないというわけでもありません。

また、住宅ローン控除と同じように、リフォーム控除も受けられます。これは一定の耐震リフォームを行うことが条件なので、詳しくは税務署のホームページなどで確認してみましょう。

耐震補強工事は複数の方法があるんですね。
はい。家に合った工事を選ぶことが大切です。

3.制震ダンバーをつける制震工事も視野に入れる

しかし、耐震補強工事を考えている人の中には「うちはまだ土台もしっかりしているし、壁のバランスも良い。しかしさらに念には念を入れて耐震強度を上げたい」という方もいるでしょう。

そんな方におすすめなのが、制震ダンバーという器具を使った制震工事です。これは制震ダンバーを壁の四隅、柱との間に取り付けることにより地震の揺れを吸収する工法。「本当に効果があるの?」と思う方もいるでしょうが、制震工事の原理は昔から高層建築に利用されています。

世界最古の木造建築と言われる、奈良の法隆寺の五重塔にも、制震工事の原理がきちんと組み込まれているのです。ですから度重なる地震にも耐え、現在まで残っているのでしょう。

地震が起こると制震ダンバーが揺れを吸収し、建物全体が揺れによってダメ―ジを受けるのを防ぎます。この工法の特徴は小規模な工事で済むということ。壁の一部を壊すだけで良いのですから、住民が住みながら工事を行えるのです。

工期も2日~3日と短期間で、その分工賃も安いでしょう。土台や壁を直すまでにはいかないけれど、耐震補強をしたいという家にはぴったりです。

また、壁を増やしたり、土台を補強したりする大掛かりな耐震リフォームと合わせて制震工事を行うことも可能でしょう。そうすれば、耐震強度がよりアップします。

特に今後70%の割合で起こるといわれている南海トラフ大地震に備えて耐震強度をアップしたい、と思っている方にとってはぴったりの工事です。

制震ダンバーという器具を入れる方法もあるんですね。
はい。家によっては大変効果的です。

おわりに

今回は耐震補強工事について事例をあげながらご紹介しました。

まとめると

  • 耐震補強工事には壁や柱・土台を補強する工法がある
  • 壁のバランスは悪かったり土台や柱が腐食していたりすると大掛かりな工事になりやすい
  • 制震ダンバーを使った制震工事を行うことも視野に入れよう

ということです。住宅が古くなったり、耐震強度が下がったりしたら、建て直す方が簡単という場合もあるでしょう。しかし、いろいろな事情があって住宅を建て直せない方も少なくありません。そんなときはぜひ耐震補強工事を行いましょう。これを行うことによって住宅の寿命も延びる場合が多いのです。

阪神淡路大震災では、たくさんの方が倒壊した家屋の下敷きになって命を落としました。住宅が崩れてくれば人間などひとたまりもありません。ですから古い住宅に住んでいる方は、可能な限りの耐震補強工事を行いましょう。自治体によっては補助金が出る場合もありますし、ローンも組めます。また、制震工事ならば耐震補強工事よりも安価に行えるでしょう。