家の傾きの原因は? 基礎工事をしても安心はできません!
床に置いたビー玉が転がって、住人が息をのむ……。こんな光景をテレビで見た方もいるでしょう。一時期、家の傾きが大きな問題になったことがありました。いったいなぜ家は傾くのでしょうか?
今回は、家の傾きの原因と対処方をご紹介します。現在は、地盤の調査や基礎工事をしっかりするので「自分の家には関係ない」と思っている方もいるでしょう。
しかし、家の基礎工事をしっかりしていても傾きが発生する場合もあるのです。これから家を建てる方や、中古住宅の購入を考えている方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.家の傾きが発生する理由は?
家は、本来は水平な場所に建てます。しかし、何らかの原因で家を建てた地盤が水平ではなくなると、その上に建っている家も傾いてしまうのです。
傾きが発生する家は築年数がたっていることが多いのですが、中には築浅でも傾く家があります。家は重量がありますから、建築した後はどうしても沈むのです。
しかし、家が水平に沈むのならば問題ありません。何らかの原因で家が斜めに沈んでしまうと、傾いてしまいます。このような住宅は、欠陥住宅である可能性が高く、一時期大変な問題になりました。
2.なぜ、地盤が歪(ゆが)むのか?
ではなぜ、家が建っている地盤が歪(ゆが)んでしまうのでしょうか? この項では、地盤が傾く原因をご説明していきます。自宅の基礎工事をしっかりしても、完全に大丈夫というわけにはいかないのです。
2-1.盛り土による沈下
日本は、宅地に使える平地がとても少ない国です。ですから、「新興住宅街」と呼ばれる場所のほとんどが、海を埋め立てたり山を切り崩したりして作ったもの。家を建てる平地を確保するのに、盛り土をして平地にしているところは多いでしょう。
しかし、この盛り土の工事がいいかげんだと、一部分だけ地盤が沈下することがあります。特に、広範囲を盛り土した場所ですと、年月によって中心部分が陥没することがあるのです。そうなれば、盛り土の端の方ほど歪(ゆが)みがひどくなるでしょう。
2-2.擁壁(ようへき)の不具合による沈下
こちらは、盛り土とは逆に壁を作って土を支えている地盤に起こりがちな不具合です。ブロック塀などを作って高台に家を建てている住宅地は少なくありません。このブロック塀が擁壁(ようへき)になります。この内側の盛り土がたりないと、転圧が下がって地盤が不均衡に沈下してしまうのです。
2-3.軟弱地盤による沈下
もともと柔らかい地面だった場所を宅地にする場合、硬い土を足したり踏み固めたりして地盤を強化します。しかし、この工事がいいかげんだと地盤が再び軟化して沈下するのです。
今は、地盤調査も入念に行いますから、地盤改良がいいかげんということはほとんどありません。しかし、建築ラッシュだった昭和40年後半までくらいは、人手不足や工期短縮のためにいいかげんな工事が行われたことも珍しくなかったそうです。
中には、コンクリートや木片を埋めこんだ、粗悪な地盤改良もあったといいます。このような単に硬いものを埋めこんだだけの地盤改良は、年月とともに埋めたものが腐食すると自然に軟弱な地盤に戻ってしまうのです。
ですから、昭和に開発された古い新興住宅地に家を建てる場合は、注意が必要でしょう。また、土地の転売がくりかえされた結果、硬い地盤と軟弱な地盤にまたがって家が建てられてしまった場合も、傾きが発生しやすくなります。
2-4.地下水のくみ上げなどによる沈下
地面の下に地下水が通っている場所は、たくさんあります。また、住んでいる場所のすぐ近くの山や田んぼが造成されて宅地になることも珍しくありません。
しかし、工場などが地下水をくみ上げすぎたり、造成で転圧が変わったりすると沈下が起こりやすくなるのです。土地の地盤をいくら強化しても、このようなことが原因で地盤沈下が起こり、家が傾くこともあります。
3.家の傾きが原因で起こる不具合は?
では、家が傾くとどのような不具合が発生するのでしょうか? この項では、その一例をご紹介します。
3-1.家が住みにくくなる
家が傾くと、窓やドアが歪(ゆが)んで開けづらくなります。また、水はけが悪くなって水回りの排水がうまくいかなくなることもあるでしょう。さらに、外壁や基礎にひび割れができる場合があります。中古住宅を購入する場合は、外壁や基礎に不自然なひび割れがないか、よく確認しましょう。
3-2.慢性的に体調が悪くなる
人の平衡感覚は大変優れています。わずか家が0.3度傾いただけで、めまいや吐き気を感じる人も多いでしょう。ちなみに、ビー玉が転がる角度が0.6度の傾きといわれています。つまり、ビー玉が転がらない程度の傾斜も、人の体は感じられるのです。ですから、傾いた家に長く住み続けるほど、対抗が悪くなりやすいでしょう。
3-3.地震により倒壊しやすくなる
傾いた家というのは、それだけバランスも悪くなっています。ですから、地震が起きるとより倒壊しやすくなるのです。現在の建築基準法では、震度6の地震に1度耐える家を造らなければなりません。しかし、いくら建物を頑丈にしても地盤が沈下していたら、基礎からひっくり返る恐れすらあるのです。
さらに恐ろしいのは液状化現象。東日本大震災では、千葉県浦安市で大規模な液状化現象が起こりました。地盤沈下して家が多く傾いている場所は、液状化現象も起こりやすいのです。つまり、たとえ建物は倒壊しなくても、地盤がゆるんだり液状化してしまったりすれば、元も場所へは住めません。大変な損失になるでしょう。
4.家の傾きを補修するにはどうしたらいい?
家の傾きを補修するには、専門の業者に依頼しなくてはなりません。地盤そのものを補強して、家の基礎を矯正するのですから、時間もお金もかかります。平均すると300万円~一千万の費用がかかるでしょう。つまり、大規模リフォームと同じかそれ以上のお金がかかるのです。ですから、中古住宅を購入する場合は家に傾きが発生していないか、よく確かめる必要があります。
また、新築の場合は家の周辺環境をよく観察しましょう。周りの家に傾きが発生していた場合、基礎工事をしっかりしても家が傾く可能性があります。また、新興住宅地の場合はもともとその場所が何であったかも確かめましょう。軟弱地盤の場合は、要注意です。
おわりに
いかがでしたか? 今回は家に傾きが発生する原因と対処法をご紹介しました。
まとめると
- 家の傾きは、地盤の沈下によって発生する。
- 盛り土や擁壁(ようへき)がしてある宅地は、地盤沈下が発生しやすい。
- 家の基礎工事をしっかり行っていても、ほかのことが原因で地盤沈下が起こる可能性がある。
- 家が傾いていると、地震の被害が大きくなりやすい。
- 家の傾きの補修は、専門の業者に依頼しよう。
ということです。家の傾きというと、ニュースで話題になるようなひどいものを想像する人も多いでしょう。しかし、ビー玉が転がらない程度の地盤沈下が起こっているような家は決して少なくありません。人ごとだと思わずに、ある程度築年数がたった家は点検してもらったほうがよいでしょう。
また、中古住宅を購入する場合は、自分の家だけでなく周りの家もよく確認してください。地域全体の家が傾いている場合もあるのです。