制震リフォームとはどんな工事? 費用はどのくらいかかるの?

日本の住宅は世界で一番地震に強いと言われています。しかしそれは1981年以降に建てられた住宅だけのはなしです。「震災対策に古い自宅の耐震工事をしたいが、費用が心配」という方は制震リフォームを検討してみてはいかがでしょうか?

そこで今回は、制震装置(制震ダンバー)を使ったリフォームの方法やメリットをご紹介します。耐震リフォームとどこが違うのでしょうか? 古い家の耐震性を上げるため、リフォームを検討しているという方はぜひ読んでみてくださいね。

  1. 制震リフォームとは?
  2. 制震リフォームを実施するまでの流れは?

1.制震リフォームとは?

制震リフォームとは聞きなれない言葉ですが、耐震リフォームとどこが違うのでしょうか? この項では、精神リフォームの特徴やメリットをご紹介します。

1-1.制震リフォームと耐震リフォームの違いは?

古い建物に震災対策を施す場合、多くの人がイメージするのが「耐震工事」でしょう。これは家の壁を増やしたり、筋交いを強化することにより文字どおり「地震に耐える家」を作ります。しかし、古い日本家屋は梁(はり)と柱で屋根を支えている造りになっている場合が多く、壁を増やすのは大変です。

また、筋交をつくるにしても、窓が大きい場合は景観が損なわれることもあるでしょう。さらに、耐震リフォームのネックになっているのは工賃の高さです。壁を増やしたり家の外に筋交いをつくったりすれば、リフォームとしてはかなりの高額になるでしょう。

普通住宅の耐震強度の目安は「震度6の地震に一度耐えきること」です。しかし、東日本大震災クラスの地震がきた場合は、震度5以上の余震が頻繁に起こります。せっかく本震を耐えきっても余震で倒れてしまう家は多いのです。一方、制震リフォームとは壁に「制震ダンバー」と呼ばれる装置を付けて家に伝わる地震の揺れを吸収してもらう工事です。

制震ダンバーは、地震の揺れに合わせて伸縮を繰り返し、建物に伝わる揺れを吸収するため、建物への被害を軽減できるのですね。制震ダンバーは、大人がひとりで抱えあげられるほどの小型の装置です。ですから取り付け工事も壁の一部を壊してダンバーを取り付けるだけで完了です。工賃も安く、家を空けるひつようもありません。

1-2.制震リフォームのメリットは?

制震リフォームにはさらに以下のようなメリットがあります。

  • 揺れを吸収してくれるので、繰り返し地震が起きても大丈夫
  • 制震ダンバーは、半永久的にメンテナンスが不要(災害で壊れた場合を除く)
  • 地震だけではなく、台風や自動車が原因の揺れも吸収してくれる

ということです。築年数が経った家というのは、一度目の地震は耐えられても、2度目3度目の余震は耐えられないことも多いです。そんな家にも制震ダンバーはおすすめです。

1-3.制震ダンバーはどんな家に取り付けられるの?

制震ダンバーは基本的に壁のある家ならばどこでも付けられます。ですから、大部分の住宅には付けられるでしょう。ただし、ベニヤ板の壁など取り外しが容易な簡易的な壁には付けられません。

また、マンションの一室に付ける場合は、壁が共有部分である可能性もあります。工事をするまでにしっかりと確認してください。さらに、いくら制震ダンバーを取り付けても、築年数が経ちすぎて土台が弱っている家ではダンバーの効果は発揮できません。制震リフォームをする前に、土台の様子や腐食が進んでいないかどうか確かめてもらいましょう。土台が傷んでいる場合はまた別の方法をとってください。

2.制震リフォームを実施するまでの流れは?

では、制震リフォームはどのような手順で行われるのでしょうか。この項ではそれをご紹介します。

2-1.工務店にリフォームを依頼する

制震工事を行っている工務店にリフォームの依頼をします。すると工務店から職人が家をチェックしに来てくれます。土台などをチェックしたのち、家のどこの壁に制震ダンバーを取り付けるか検討しましょう。また、筋交いにつけるという選択もあります。

2-2.工事の日程の決定~片付け

工事の日程が決まったら、制震ダンバーを取り付ける壁がある部屋を掃除して、移動できるものは他の部屋に移しましょう。いくら一部とはいえ壁を壊すのですから、粉じんが飛びます。動かせない家具などは養生シートなどで保護しておきましょう。また、壁にぴったりくっつけた家具はどかしてください。

2-3.工事開始

制震ダンバーの取り付け工事は2~3日で終了します。また、騒音などがでることもありません。工事車両が家の前に止まるという場合は、両隣くらいにはあいさつに行ってください。

2-4.完了

制震ダンバーをとりつけ、壁の修理が終わったら制震リフォームは完了です。制震ダンバーはそれ自体が壊れるような大地震でもない限り、メンテナンスは不要です。ただ壁の修理がうまくいかなかった場合のみ、工務店に再工事してもらいましょう。

また、耐震リフォームの料金は住宅ローンと同じように所得税の減税対象になります。リフォームローンを組んだ場合でも、必ず支払調書をとっておいて、確定申告に役立てましょう。

2-5.制震ダンバーには各社の特色がある

制震ダンバーは、会社ごとに特徴があります。「揺れを吸収する」という目的は同じでも、いろいろな機能がオプションでついている場合もあるでしょう。工務店を選ぶ際には、取り扱っている制震ダンバーの種類も確認してみてください。

2-6.リフォーム詐欺はあるの?

以前ほどではありませんが、まだまだリフォーム詐欺は全国で発生しています。制震工事も残念ながら詐欺は存在します。一例をあげると、天井裏の梁(はり)に制震ダンバーが取り付けられていたというケースがありました。そんなところにダンバーをつけても全く効果はありません。詐欺まがいの業者は、大掛かりな工事を嫌います。ですから、屋根裏や床下など入りやすく、詐欺をしたことが発覚しにくい場所にこのんで意味のない道具をつけたがるのです。

また、リフォーム詐欺のほとんどは飛び込み営業で家にやってきます。制震リフォームが必要か否かということは、詳しく調査をしてみないとわかりません。道を歩いていて気づくことは絶対にありませんので、このような営業がやってきたら、ドアを開けずに断りましょう。

おわりに

今回は制震ダンバーを使った制震リフォーム工事のメリットや行う手順をご紹介しました。

まとめると

  • 制震リフォームは耐震リフォームに比べて費用が安く、工事も簡単に行える
  • 制震リフォームは揺れを吸収する制震ダンバーという装置を取り付けることで、建物に伝わる揺れをダンバーが吸収するようにする工事
  • ダンバーのメンテナンスは不要、台風などの強風による揺れも吸収してくれる

ということです。

制震リフォームは耐震リフォームに比べて知名度は低いですが、何度も繰り返す揺れに強いなど、地震が多い場所にはぴったりの工事です。また、新築の家でも制震ダンバーを組み込むことで、地震に強い家を作ることができます。こちらも、耐震工事や免震工事をするよりも費用をぐっと抑えることが可能です。

さらに、高層ビルなどにも制震ダンバーは活躍しています。地震の揺れは高いところほど大きく伝わりますので、制震ダンバーを取り付けることで、上層階が激しく揺れるのを抑えるのです。ですから、私たちは気づかないうちに制震工事の恩恵を受けているかもしれません。