制震技術とはどんな技術? 地震から身を守る制震技術を知りたい!
地震の恐ろしさは身をもって体験している日本人は、地震対策にいろいろと頭を悩ますところでしょう。最近は、自分や家族を守る「家」の地震対策として、制震技術を用いた家作りを考えている人が多いようです。そこで、ここでは、制震技術についてご紹介しましょう。
1.制振技術とは
地中にある複数の大きなプレートにより、複雑な力がかかっている場所に存在する日本は、世界でも有数の地震多発国です。
まだ記憶に新しい2011年3月11日の東日本大震災をはじめ、過去10年間で震度6を越える地震はさまざまな地域で何度も起きています。
そして、内閣府の発表(平成21年度)によると、今後起こる地震の確率は以下のようになっているのです。
- 海溝型地震…今後30年以内にM7.5クラスの地震(震度6〜7の大地震)が起こる確率は99%。
- 活断層による地震…今後30年以内にM8クラス(巨大地震・関東大震災レベル)が起こる確率は14%。
日本で暮らしている以上、地震から逃れることはできません。
そこで、大切なのが、自分や家族の命や財産を守るためにも「家」の地震対策なのです。
4年前の東日本大震災を機に、「地震に強い家作り」に対しての注目度はますます高まっています。
1-1.耐震・免震・制震の違いとは
地震に強い家を作る方法としては、「耐震(たいしん)」・「免震(めんしん)」「制震(せいしん)」があります。
それぞれの違いは…
耐震(たいしん)
地震で建物が倒壊しないように、主に壁の強度を上げて地震に「耐える」構造にすることです。
耐久壁を増やしたり、接合部分を固めて硬くしたりすることで建物が地震に耐えられるようにします。
耐震の場合は、地震の揺れは建物に伝わり、階数が上がるほど揺れは大きくなるのが特徴です。
建物の揺れが減少するわけではないので、物が落ちたり窓枠や扉がゆがんだりなどの二次災害が起こる可能性もあります。
免震(めんしん)
基礎と建物との間に免震装置を設置することで、建物が地震の揺れから「免れる」ようにした構造です。
建物と地盤が切り離されているので、大地震のときでも振動が伝わりにくく、家具が倒れたり物が落ちたりなどの二次被害が避けられます。
制震(せいしん)
建物の構造のなかに制振装置を組み込み、地震の揺れを吸収する構造です。
揺れが大きくなる高層ビルには特に有効な技術とされています。
また、家具の転倒などの二次災害も軽減できるのです。
制震技術が開発された当初は、高層ビルや超高層ビルばかりに用いられていました。
しかし、現在では中規模の建物や一般住宅にも制震装置を取り入れることが可能になったのです。
1-2.制震技術のメリット
制震装置は、建物の柱と梁(はり)の間に制震装置を設置するため、スペースに余裕がない建物でも工事が可能です。
免震の場合は、建物の基礎部分に免震装置を設置するため、新築のときだけしか工事できず、リフォームすることはできません。
耐震は新築でもリフォームでも工事は可能ですが、3日〜1週間ほど工事期間が必要です。
制震は新築・リフォームの両方が可能で、リフォームのときでも工事期間が短いのもメリットでしょう。
さらに制震には以下のような特徴があります。
- 揺れ自体が低減されるので、家具の転倒などを防ぐ。
- 上層階ほど揺れにくい。
- 建物の変形を30〜50%ほど抑制するので、家のダメージを最小限に抑えられる。
- 施工コストが安い。
- どのような建物でも施工が可能。
1-3.制震技術の分類
最近では大型の建物だけではなく、戸建て住宅にも採用されている制震技術ですが、力学的な形態により下記の3つに分類されます。
- 層間ダンバー型…建物の上(床)と下の間をダンバーで連結し、地震による振動で変形したときはダンバーも変形して、エネルギーを吸収し建物の損傷を防ぐ仕組み。
- マスダンバー型…建物の最上階に「錘(おもり)」を設置し、おもりと建物の間に生じる力を利用して、建物の揺れを低減する仕組み。
- 連結型…複数の建物をダンパーで連結する制震機構。建物がお互いの重さを利用し、大きな揺れを低減する仕組み。
また、制震技術はネルギーの入力の有無で3種類に分類されます。
- パッシブ制震
- セミアクティブ制震
- アクティブ制震
それぞれの違いを次の章でご紹介しましょう。
2.パッシブ制震とは
パッシブ制震とは、「電力などのエネルギーを一切必要としない」制震装置のことです。
外部から力を加えず建物の振動を抑えるために、オイルダンパー(油の粘性を利用して振動や衝撃をやわらげる装置)や、粘性と弾性の両方を持つ物質、金属などを利用した制震壁・制震斜材・制震柱を組み込みます。
建物の各所で揺れを吸収し、さらに、電気配線が不要なので工事も簡単で低コストなことも魅力です。
また、地震につきものの停電の影響も受けないので、安定して制震効果を発揮できる技術といわれています。
3.セミアクティブ制震とは
セミアクティブ制震とは、「少量のエネルギーの入力を必要とするもの」と分類され、電力エネルギーを必要としないパッシブ制震と、電力エネルギーで制御するアクティブ制震の中間方式を指します。
具体的には、センサーなどを用いて、オイルダンパーのオイル流出量を調整し、パッシブ制震よりも効率的に振動の低減を図ることができる技術のことです。
4.アクティブ制震とは
アクティブ制震とは、直接外部から電力エネルギーを入力することにより、地震のときの振動を制御する装置のことです。
アクティブ制震は「多くのエネルギー入力を必要とするもの」と分類され、建物の上に設置した制震装置、制御用コンピューター、センサーで構成されています。
強風や地震で発生した建物の振動情報をセンサーに取り込み、揺れと額方向に「錘(おもり)」を移動することにより、揺れを軽減する仕組みになっているのです。
建物の振動を抑制する装置は、逆に「建物を振動する力」も持っているので、アクティブ制震の設計には細心の注意が払われています。
人為的な設計ミスや誤作動、意図的な操作で建物を揺らすことも可能だからなのです。
また、アクティブ制震やセミアクティブ制震の場合、大きな地震につきものの停電が起こったときのために、無停電電源装置を用いています。
アクティブ制震装置は「東京ミッドタウン」のような大型建築物に使用されるので、一戸建て住宅に用いられることはありません。
また、制御のために用いているコンピューターの寿命は建物よりも短いので、定期的なメンテナンスが必要となります。
5.まとめ
いかがでしたか?
耐震・免震・制震という言葉は耳にしたことはあるけれども、具体的には説明できないという人は多いようです。
また、制震は「建物のなかに地震を制御する装置を仕組む」ということはご存じでも、いろいろな種類の装置があるのは知らないという人もいるでしょう。
そこで、ここでは、「制震技術」とはどのようなものなのか…をわかりやすくまとめてみました。
- 制振技術とは
- パッシブ制振とは
- セミアクティブ制振とは
- アクティブ制振とは
最初は高層ビルなどにしか用いられていなかった制震技術も、最近では普通の住宅に用いられるようになりました。
制震技術は、大切な家の地震対策として注目を集めています。
免震、耐震と比較すると新築でもリフォームでも工事が可能という特徴があり、費用面でも免震や耐震と比較すると一番リーズナブルなのもメリットでしょう。
ほかにも制震技術にはさまざまな利点があります。
自分や家族の命や財産など大切なものを守るためにも、制震技術を生かした家作りを考えてみてください。