職場の安全対策はどうする? 主なケガや事故の種類・対策法を詳しく!

「職場の安全対策担当になったが、具体的に何をすればよいのだろう」「職場では、どんな事故やケガが多いのか知りたい」とお考えではありませんか? 職場では、何らかの原因による事故で従業員がケガをする可能性があります。従業員の安全を守るためには、職場の安全対策をきちんと実施することが必要です。そのためにも、まずは、どんな事故が起こりやすいのか、どんな対策を行うべきかなど、よく理解しておくことが大切でしょう。

そこで今回は、職場の安全対策について詳しく解説します。

  1. 職場で起こるケガの原因は?
  2. 職場ではどんな事故が起こりやすい?
  3. 職場でのケガを防ぐ安全対策は?
  4. 職場でケガをしてしまったときの対応
  5. 職場の安全対策に関するよくある質問

この記事を読むことで、職場の安全対策を進めるポイントがよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。

1.職場で起こるケガの原因は?

最初に、職場で起こるケガの原因について見ていきましょう。

1-1.ものにつまずいて転倒した

職場では、ものにつまずいて転倒したことが原因のケガが多く見られます。たとえば、普段はものが置かれていないところを気付かずに歩いてつまずいたり、段差に足を取られてしまったりするなどです。転ぶ体勢によっては、体を強打したり足や腰をひねってしまったりすることもあります。また、頭部を打ち付けて思わぬ後遺症が出ることもあり危険です。

1-2.重いものを持ち運んだ

仕事で重いものを持ち運んだ際、足腰を痛めることもあります。持ち上げ方が悪かったり、重過ぎたりすることで、足腰に大きな負担がかかるからです。重いものを持ち上げた途端、ぎっくり腰になったりひざを痛めてしまったりします。工場や建設現場だけでなく、オフィスでも起こりうるので注意が必要です。

1-3.作業中や移動中に高所から転落した

作業中や移動中に高所から転落して、大きなケガになることもあります。足元の安全確認をきちんとせずに作業したり移動したりすることが、思わぬケガにつながるのです。中には、体調不良や疲れにより集中力が低下して、転落することもあります。いずれにしても、高所からの転落は、大ケガをしたり命を失ったりすることもあるため大変危険です。

1-4.ドアに手をはさまれた

ドアに手をはさまれてケガをすることも、職場でよく見られます。たとえば、風の強い日に急にドアが閉まって手や指をはさまれてしまうこともあるでしょう。重症になると、指を切断してしまうこともあり深刻です。また、手元の安全確認不足により、ほかの人の手がドア付近にあることに気付かず閉めてしまい、ケガをさせてしまうこともあります。

1-5.不注意により人とぶつかった

従業員の不注意でぶつかってしまい、ケガをするというケースもあります。従業員が周囲の安全に気が回らなくなったときによく起こる事故です。特に起こりやすいのは、以下のような場所・条件となります。

  • 通路が交差する場所で視界が悪い
  • 部屋の入り口や玄関
  • イスから立ち上がったとき
  • 荷物をたくさん抱えて視界不良のまま歩いたとき

1-6.そのほかにも多くの原因がある

職場で起こるケガの原因には、そのほかにも以下のようなものがあります。職場や仕事内容によっても、さまざまです。

  • 調理中に火が服に燃え移った
  • クギを打ち付けるときに手がすべった
  • 高所からものが落下した
  • 作業機械に指をはさまれた

2.職場ではどんな事故が起こりやすい?

職場で起こる事故にはどんなものがあるか、3つの事例を挙げて詳しく解説します。

2-1.床に落ちていた工具を踏んで転倒・骨折した

機械メーカーの工場で働くAさんは、最終調整工程の担当です。休憩のチャイムが鳴ったので、持ち場を離れようとしたところ、床に落ちていた工具を踏んでしまいました。そのため、Aさんは派手に転倒し、腕を骨折してしまったのです。医師の診断では全治2か月の大ケガで、仕事に大きな支障が出てしまいました。

2-2.フォークリフトをよけるために作業員同士がぶつかった

倉庫内でフォークリフトを操作していたBさんは、日ごろの疲れがたまっていたせいか、後方で同僚が歩いていることに気付くことができませんでした。その後、Bさんはそのままフォークリフトをバックしてしまったため、驚いた同僚はとっさに横に大きくよけたのです。運が悪いことに、同僚がよけた先には別の従業員がいて、ぶつかってしまいました。幸いにも大ケガには至りませんでしたが、ぶつかった2人は全治1週間程度の打撲を負ったのです。

2-3.地震で高所に積んであったものが落下した

Cさんの職場は常にものが散らかっていましたが、誰も整理整頓しようとしませんでした。あるとき、震度6強の地震が起こり、高所に積んであったものが大量に落下してしまいました。そのため、Cさんは落下したものが頭部に当たり、4針も縫う大ケガをするはめになったのです。職場では、Cさんと同様に落下物でケガをする人がたくさんいました。

3.職場でのケガを防ぐ安全対策は?

職場のケガを防ぐ安全対策について詳しく見ていきましょう。

3-1.職場の5Sを進める

職場でのケガを防ぐには、5Sを進めることが有効です。5Sには、整理・整頓・清掃・清潔・しつけという意味があります。それぞれの内容は、以下をご覧ください。

  • 整理:不要なものを処分する
  • 整頓:必要なものを分かりやすく並べて明示する
  • 清掃:定期的に掃除をして職場環境を整える
  • 清潔:職場の衛生環境を維持する
  • しつけ:従業員に職場を適切に使用することを意識させる

5Sは特別なことではなく、普段から十分に実施できるレベルの内容です。従業員が5Sを徹底するだけでも、職場のケガを大幅に減らすことができます。

3-2.KY活動を進める

KY活動を進めることも、職場のケガ防止に必要です。KY活動とは、危険予知活動のことで、主に工場や建設現場などで活用されています。職場で起こりうる危険を事前に考えて対策をすることで、事故によるケガを防ぐことが可能です。特に、危険度が高い作業をする職場では、KY活動をしっかり行っているかどうかで随分と差が出ます。職場の事故を未然に防ぐためにも、KY活動で従業員の意識を高めましょう。

3-3.ヒヤリハット報告会を開く

ヒヤリハット報告会を定期的に開くのもおすすめします。ヒヤリハットとは、事故につながる可能性が高かった状況のことです。今回は事故に至らなかったものの、次回同じことが起きたら危険だという内容を職場で共有します。ヒヤリハットは、疲労などで注意力が低下したときに起きやすく、誰でも当事者になる可能性があることから、内容を共有することで職場でのケガを防ぐのに効果的です。

3-4.事故が起こりやすい場所を「見える化」する

事故が起こりやすい場所は、従業員に分かりやすく「見える化」することも大切です。注意を集めやすい色使いと分かりやすい言葉でステッカーを作り、注意喚起を行いましょう。ステッカーを貼るときは、従業員に対して必ず貼る意味を説明してください。単に貼っておくだけでは、見える化の効果を十分に期待できません。

3-5.安全教育を行う

従業員に適切な安全教育を行うことも大切です。従業員が高い安全意識を持っていれば、多くの事故を防ぐことができます。さまざまな事例を、スライドなどで分かりやすく説明するなどして、従業員に当事者意識を持ってもらいましょう。よくありがちな、自分だけは大丈夫という考えをぬぐい去ることが大切です。

4.職場でケガをしてしまったときの対応

職場でケガをしてしまったときの対応を詳しく解説します。

4-1.症状を見極めて処置をする

職場でケガをしてしまったら、症状を見極めて処置をしましょう。まずは、適切な手当てを施すことが大切です。明らかに重症だったり職場での処置では手に負えなかったりする場合は、病院にて治療が受けられるよう手配しましょう。労災でのケガと認定された場合、労災保険から治療費が後日返還されます。

4-2.ケガの原因と状況を突き止めて再発防止に努める

ケガの処置が終わったら、ケガの原因を突き止めて再発防止に努めましょう。本人からの事情聴取を行ったり、従業員を集めて報告会を開いたりしてください。ケガの原因と状況を従業員で共有し、安全意識を高めることが再発防止につながります。なお、ケガが発生してからなるべく早く動くことが大切です。

5.職場の安全対策に関するよくある質問

最後に、職場の安全対策に関する質問に回答します。それぞれ参考にしてください。

Q.職場の安全対策としてすぐにできることは?
A.職場の整理整頓です。ものが多くて雑然とした環境では、思わぬ事故が起こりやすくなります。整理整頓なら、すべての従業員に協力してもらうことで半日もあれば見違えるように改善できることでしょう。

Q.職場の安全対策に適した資格はある?
A.代表的な資格は、安全管理者です。安全管理者は、労働安全衛生法に基づいて職場の安全管理を進めます。安全管理者に関するより詳しい内容は、公益社団法人労務管理教育センターのホームページを参考にしてください。

Q.安全教育を業務時間外に行ってもよい?
A.基本的には、業務時間内で行ってください。安全教育は、業務の一つとして行われるべきものだからです。なお仕事の都合などにより時間外に実施したいときは、会社が従業員に残業代を支払う必要があります。

Q.事故やケガをしにくい職場の特徴は?
A.以下を参考にしてください。

  • 職場の整理整頓が行き届いている
  • 不用品や私物を放置していない
  • 通路の広さに余裕がある
  • 適度な休憩や休日の確保など、従業員の勤労管理がきちんとしている
  • 従業員に対して定期的に安全教育を行っている
  • 従業員の安全意識が高い

Q.職場の整理整頓で出た不用品はどんな方法で処分すべきか?
A.事業用で使用したものは産業廃棄物になるため、産業廃棄物収集運搬許可を持つ業者に依頼し、処分してもらいましょう。なお、オフィス家具などで、まだ十分使えるものは買取に出すこともできます。事業用の不用品の処分と買取の両方を行っている業者に依頼すると便利です。

まとめ

今回は、職場の安全対策について詳しく解説しました。職場の安全対策を万全にすることで、従業員が安心して仕事に取り組むことができます。まずは、職場にどんな危険があるのか、どんな事故が起こりやすいかをきちんと理解しましょう。事故やケガが多く発生する職場には、何らかの原因があるものです。5Sを進める、KY活動をする、ヒヤリハット報告会を開く、見える化を進める、安全教育を行うなど、さまざま方法により安全対策を進めましょう。